日米豪印外相会談で“中国・習政権封じ” 対する中国外務省は軍事演習動画で“軍事的恫喝” 菅政権は米国の対中包囲網に全面協力すべき 夕刊フジ 20201004
ドナルド・トランプ米大統領は、新型コロナウイルスに感染して2日夕から首都ワシントン郊外にある軍の病院に入院している。「早期退院説」と「数日が正念場説」が流れるなか、マイク・ポンペオ米国務長官はアジア歴訪日程を短縮したが、東京で6日開催される日本とオーストラリア、インドとの4カ国外相会談には出席する。会談では、中国共産党政権の軍事的覇権拡大に対抗する「自由で開かれたインド太平洋」構想の推進に向けた連携強化を確認するが、中国は軍事演習を行うなどして牽制(けんせい)した。菅義偉首相とポンペオ氏の会談も予定されており、菅首相の国家観や外交姿勢が確認されそうだ。
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米国務省は3日、ポンペオ氏が4~8日の日程で予定していたアジア歴訪日程を4~6日に短縮し、韓国とモンゴル訪問を中止すると発表した。ポンペオ氏は前日、歴訪予定は変更しない考えを表明したばかりだった。
トランプ氏の容体が今後数日間、予断を許さない状況であることが3日判明し、日程短縮に踏み切った可能性がある。不測の事態が起きた場合のポンペオ氏の大統領職の継承順位は4位。
世界各国のリーダーらがお見舞いのメッセージを発信するなか、中国の習近平国家主席も3日、「早く良くなるようお祈りする」という電報を送った。中国メディアが報じた。
トランプ氏は以前から、中国が新型コロナウイルスの世界的大流行(パンデミック)を引き起こしながら、軍事的覇権拡大を続けていることを、「世界規模の大量殺人を引き起こした」などと批判してきた。習氏の言動には、トランプ氏や米国民の怒りを鎮めようという意図も感じられる。
こうしたなか、東京で6日、日米豪印外相会談が開かれる。
茂木敏充外相とポンペオ氏、オーストラリアのマリーズ・ペイン外相、インドのスブラマニヤム・ジャイシャンカル外相が出席し、「自由で開かれたインド太平洋」構想の実現に向けた連携を確認する。中国共産党政権による軍事的覇権拡大や、ウイグルやチベット、南モンゴル、香港での人権侵害、強権政治を念頭に置いている。
こうした動きは、安倍晋三前首相が2012年に発表した英文の論文「セキュリティ・ダイヤモンド構想」が基になっている。「自由・民主」「人権」「法の支配」といった基本的価値を共有する4カ国が、外交・安全保障面で連携する構想だ。
米国主導の「日米豪印戦略対話(QUAD=クアッド)」も動き出している。これには、英国やEU(欧州連合)、カナダ、台湾など民主主義諸国・地域を結集させる将来像も描かれている。
4カ国外相会談について、中国外務省の汪文斌副報道局長は9月29日の記者会見で、「いかなる多国間協力も第三国に照準を合わせたものであってはならない」と警戒感を示した。
それだけではない。中国人民解放軍は9月28日、南シナ海と東シナ海、黄海、渤海の4海域で軍事演習を同時実施した。中国国営放送「中国中央テレビ(CCTV)」では、台湾海峡を管轄する東部戦区が市街戦を想定して行った演習の様子を動画を公開している。
4カ国外相会談への軍事的恫喝(どうかつ)に他ならない。
米国情勢に詳しい福井県立大学の島田洋一教授は「4カ国外相会談が、中国への圧力を強めるために行われるのは当然だ。オーストラリアやインドが中国に厳しい姿勢を取っているため、より中国へ強硬な姿勢を示すのはいいタイミングといえる。米国などとしては、就任したばかりの菅首相や同政権がどのような認識かを知りたいのだろう」と指摘する。
菅首相は表向き、「安倍前政権の外交路線を継承する」と語っているが、自民党の二階俊博幹事長ら「親中派」の影響力が高まったとの見方もある。自民党総裁選で、石破茂元幹事長が「アジア版NATO(北大西洋条約機構)創設」を主張したが、菅首相は否定的見解を示していた。
国際政治学者の藤井厳喜氏は「トランプ氏が入院中の米国だが、菅首相の言動にやや懸念があるため、いち早く確認したい意図があるようだ。現在、中国と台湾、中国とインドの緊張が高まっており、4カ国としても早急に対応しなければならない。アジアの状況は、昨年から大きく変わっている。菅政権がしっかりと認識するとともに、米国の対中包囲網に全面協力すべきだ」と指摘した。
月内には中国の王毅国務委員兼外相も来日する予定だが、日本の立場を明確にする必要がありそうだ。
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